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福岡高等裁判所 平成元年(行コ)6号 判決 1991年2月28日

福岡県久留米市善導寺町飯田一〇七三番地の二

控訴人

香月虎雄

右訴訟代理人弁護士

馬奈木昭雄

内田省司

高橋謙一

福岡県久留米市諏訪野町二四〇一

被控訴人

久留米税務署長 橋本瑞夫

右指定代理人

福田孝昭

坂井正生

中野良樹

山崎元

木原純夫

白濱孝英

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の申立て

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が昭和五八年五月三〇日付けでした控訴人の昭和五四年分、同五五年分及び同五六年分の各所得税の決定及び各無申告加算税の賦課決定(いずれも異議決定及び審査裁決により一部取り消された後のもの。以下同じ。)をいずれも取り消す。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文と同旨

第二当事者の主張

次に付加し訂正するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決四枚目裏九行目に「二八五万五六五九円」とあるのを「二八七万五六五九円」と訂正する。

2  原判決五枚目裏四行目に「三三・二四平方メートル」とあるのを「三三・二五平方メートル」と訂正する。

3  控訴人の当審における補充主張

(1)  造成費のうち雑工事費は一八二万円である。

乙第二号証、第五、第六号証の各領収証は、本件土地北側道路に接する部分の溝新設工事及びその道路を挟んで向こう側の道路南側溝の補修工事代金並びに道路の下を通して排水用パイプを設置した工事費を、控訴人が隣地所有者二名分を含めて支払ったもので、雑工事費に加算すべきであり、また、乙第一号証の四〇万円は六〇万円の内金であるから六〇万円の工事費を認定すべきである。

(2)  同じく、コンクリート擁壁工事費は、甲第一九号証コンクリート擁壁工事内訳書記載のとおり一五三八万八二六〇円である。

(3)  同じく、原判決添付目録四の土地の排水管工事費は甲第二〇号証排水管工事内訳書記載の三四二万八七〇〇円であり、南側法面コンクリート垣積工事費は乙第一八号証記載の八九二万七〇五〇円であって、乙第一八号証の隣接排水工事は前記目録四の土地の排水管工事とは別工事であるからこれを控除すべきではない。

(4)  その他、東北部分コンクリート垣積工事費は甲第二一号証記載のとおり一六五万七八〇〇円であり、車庫工事費は甲第二二号証記載のとおり五五万円である。

(5)  以上の各工事費の見積計算については、一級土木施工管理技師の資格を有する元岡明人が、各年度ごとに発行されている「施工単価資料」等の公刊資料に基づいて単価を決定し、専門的知識に基づいて工事量を認定したうえ算出したものであるのに対し、被控訴人のした推計は、工事単価についても客観性がないうえ、現地で正確な数量を算出することもせずになされており、合理性がない。

(6)  借入金利子について

控訴人が南部信用組合から借り受けた金員のうち、本件土地に使用しなかったのは、有明町の土地購入資金六〇〇万円及び自家用車購入資金一七七万二〇〇〇円だけであるから、甲第八号証記載の一一五八万八三〇四円のうち右六〇〇万円と一七七万二〇〇〇円の利息を差し引いた残額が本件土地に要した利息である。

4  被控訴人の当審における補充主張

(1)  控訴人は雑工事費の根拠として乙第二号証、第五、第六号証の各領収証をあげるが、雑工事の内訳を明らかにせず具体的な工事箇所についての証言は喰い違い、雑工事に含まれる工事の範囲も明らかではない。また、本件土地の北側に接する道路側溝工事や道路下の排水管敷設工事は控訴人が一人で負担すべき性質の工事ではなく、道路や側溝に接する全ての土地所有者が等しく負担すべきものであり、控訴人も、当該側溝工事を施工する予定であった東邦地所株式会社から、控訴人、高木保雄及び笹渕幸子の三名分に対する賠償金八〇万円を代表して取得し、これを元岡明人に施工させてその工事費に右八〇万円を充当しているのであるから、この分について控訴人が現実に負担した金額はなく、右八〇万円がどの領収証に結びつくのかもはっきりしない。

(2)  控訴人は、コンクリート擁壁工事費の証拠として、当審において甲第一九号証(工事内訳書)を提出しているが、その基礎図面である甲第一二号証の一ないし三と工事長等の数字が異なり、その作成日とされる昭和四八年六月一〇日は未だ現実にコンクリート工事が施工されていない時点であり、単なる見積書的なものにすぎないことになる。さらに、目録一ないし四の土地は連続しているものではなく、同一の工事条件であったといえないから、各筆毎の内訳書が作成さるべきである。

また、控訴人は、本件土地は近隣地と比べて工事費が割高になった旨主張するが、主張自体極めて抽象的でどう相違し工事費にどう影響を与えたか具体的な説明はない。

(3)  控訴人は、乙第一八号証の隣接排水工事は前記目録四の土地の排水管工事とは別工事であるから南側法面コンクリート垣積工事費からこれを控除すべきではない旨主張するが、昭和四七年に施工された雑工事的な同工事に限って、昭和五一年に施工した本件垣積工事と併せて見積りし、請求することは、理解しがたい。

(4)  控訴人は、排水管工事費の証拠として甲第二〇号証(工事内訳書)を提出するが、現地での測定もなく記憶に基づいて作成したものであり、右内訳書の多額の仮設等基礎工事費はコンクリート擁壁工事の上に施工した垣積工事と同時に施工したもので、基礎工事はこれらの工事に計上しているとみるのが合理的である。

(5)  控訴人は、東北部分コンクリート垣積工事費の証拠として甲第二一号証(見積書)を提出するが、現地での実測とは工場長が異なり、実額の根拠にはなりえない。

(6)  控訴人は、車庫工事費の証拠として当審において甲第二二号証(見積書)を提出するが、何を根拠に何時作成したか不明で支払の有無も明らかでない。

第三証拠

原審及び当審における訴訟記録中の各証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  当裁判所も控訴人の本訴請求は失当としてこれを棄却すべきものと判断するが、その理由は次に付加し訂正するほか、原判決の理由説示と同一であるからこれを引用する(当審で取り調べた新たな証拠によっても、右の認定判断を左右するに足りない。)。

1  原判決一二枚目裏一一行目末尾に続けて、次のとおり加える。

「なお、控訴人は、乙第一号証記載の四〇万円は六〇万円の内金であるから、六〇万円の工事費を認めるべきであると主張するが、右乙第一号証が六〇万円の支払があったことを示すものでないことは勿論、原審及び当審における証人元岡明人の証言によれば、控訴人の元岡に対する工事代金債務は完全に清算されてはいないというのであるから、この点からしても控訴人の右主張は理由がない。」

2  原判決一三枚目裏一一行目の後に改行して、次のとおり加える。

「控訴人は、コンクリート擁壁工事費は一五三八万六二八〇円であると主張し、当審証人元岡明人の証言及びこれにより真正に成立したものと認められる甲第一九号証には右主張に副う供述部分及び記載部分があるが、右は原本の存在及び成立に争いのない乙第四九ないし第五二号証に照らすと到底信用できず、他に被控訴人の推計の合理性を疑わしめるに足りる証拠はない。」

3  原判決一四枚目裏初行の後に改行して、次のとおり加える。

「控訴人は、南側法面コンクリート垣積工事費は八九二万七〇五〇円であって、乙第一八号証の隣接排水工事費は前記目録四の土地の排水管工事とは別工事であるからこれを控除すべきではない旨主張するが、当審証人元岡明人の証言及び控訴人本人尋問の結果によれば、右工事場所についての右両名の供述にも喰い違いがあり、右主張のとおりに別工事であることを認めるに足りない。

4  原判決一四枚目裏五行目の後に改行して、次のとおり加える。

「控訴人は、原判決添付目録四の土地の排水管工事費は甲第二〇号証排水管工事内訳書記載の三四二万八七〇〇円である旨主張するが、当審証人元岡明人の証言によれば右甲第二〇号証は現地での測定もなく記憶に基づいて作成したものであり、右証言の不確実性と併せてその記載は極めて疑わしいと言わざるを得ず、被控訴人の推計の合理性を疑わしめるに足りない。」

5  原判決一四枚目裏八行目から同裏九行目にかけて「成立に争いのない乙第二三及び第二五号証」とあるのを「乙第二三号証、成立に争いのない乙第二五号証」と訂正する。

6  原判決一五枚目表四行末尾に続けて、次のとおり加える。

「控訴人は、東北部分コンクリート垣積工事費は甲第二一号証(見積書)記載のとおり一六五万七八〇〇円である旨主張するが、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第五四号証及び当審証人元岡明人の証言によれば、右甲第二一号証は現地での実測と異なることが明らかで実額算定の根拠とはなりえないものと言うべきである。」

7  原判決一五枚目表七行目末尾に続けて、次のとおり加える。

「控訴人は、車庫工事費は甲第二二号証(見積書)記載のとおり五五万円である旨主張するが、当審証人元岡明人の証言によっても、右甲第二二号証は何を根拠に何時作成したか不明で支払の有無も明らかでなく、現状が当時と変わっていること(当審証人元岡明人の証言によって明らかである。)からみても到底実額算定の根拠となりえない。」

8  原判決一五枚目裏六行目から同裏七行目にかけて「第一〇、第一一号証、原本の存在及び成立に争いのない乙第二二号証の一」とあるのを、「原本の存在及び成立に争いのない甲第一〇、第一一号証、乙第二二号証の一」と訂正する。

二  以上のとおりで、本件所得税の決定については、必要経費中の造成費の額及び借入金利子の額につき推計により算定すべき必要性があり、かつ、被控訴人のした推計に合理性がある(控訴人主張の実額は採用することができない。)と認められ、これと同旨の理由により本訴請求を棄却すべきものとした原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 友納治夫 裁判官 渕上勤 裁判官 榎下義康)

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